債務整理|公共施設(公園)の所有権に関する判例

資格
平成
小型

主文

1 原判決を取り消す。
2 被控訴人Aは,原判決別紙物件目録1記載の各土地について,被控訴人Bは,同目録2記載の土地について,控訴人に対し,それぞれ真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続をせよ。
3 被控訴人株式会社Cは,原判決別紙物件目録1記載の各土地に設定した原判決別紙登記目録記載の仮登記の抹消登記手続を承諾せよ。
4 訴訟費用は,第1,2審を通じ,被控訴人らの負担とする。

事実及び理由

第1 当事者の求めた裁判

1 控訴人
主文同旨
2 被控訴人ら
控訴棄却

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第2 事案の概要

1 本件は,D株式会社が行った都市計画法(法)29条の許可に基づく開発行為としての宅地造成に伴い,法40条に基づき,従前の公共施設に代えて新たに設置される公共施設(公園)である原判決別紙物件目録1及び2記載の各土地(本件各土地)の所有権を取得したとする控訴人が,同目録1記載の各土地(目録1記載の土地)について所有権移転登記を取得した被控訴人A及び同目録2記載の土地につき所有権移転登記を取得した被控訴人B並びに目録1記載の土地について所有権移転請求権仮登記を取得した被控訴人株式会社Cに対し,被控訴人らは,不正・不当な意図や目的をもって,これらの登記手続を経たものであるから,背信的悪意者に該当し,控訴人の登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者に当たらないとして,本件各土地の所有権に基づき,被控訴人A及び被控訴人Bに対しては,真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続を,被控訴人株式会社Cに対しては,所有権移転請求権仮登記の抹消登記手続の承諾を,それぞれ求めた事案である。
原判決は,被控訴人らが背信的悪意者に当たるとは認め難いとして,控訴人の請求を棄却した。これに対して,控訴人が不服を申し立てたものである。
2 以上のほかの事案の概要は,次のとおり付加するほか,原判決の事実及び理由欄第2記載(2頁以下)のとおりであるから,これを引用する。
(控訴人の当審における主張)
(1) 原判決は,本件各土地について,公園の特徴を捨象し,一般の宅地と同様の理解をしているが,誤りである。
すなわち,法において,公園の設置が要請されているのは,地方公共団体自身の利益のためではなく,もっぱら快適な都市生活を送るという開発計画区域内の居住者の利益のためである。
そして,宅地開発においては,一定の公共空地の確保が義務づけられており,当該公共空地部分については販売対象とならないことから,その販売価格相当分を分譲地に価格転嫁して販売していることは一般的に知られている。
また,一般人においても,住宅地内の空地を購入する動機は,建物建築のためであるところ,地目が公園となっていれば,そもそも建物建築が可能なのか疑義があり,あえて購入することはしないのが通常である。
このように,公園用地は,まさに公共施設用地としての機能を期待され,だからこそ,一般の宅地とは異なった評価すなわち市場性がないとの評価を受けるのである。
(2) 原判決は,控訴人の担当者は,被控訴人らが本件各土地の取引を行った時点で,控訴人が本件各土地の所有権を既に取得しているとの認識を有していなかったとしたが,誤りである。
公共用地の地方公共団体への所有権移転登記手続は,それが農地の場合,まず,農地転用届出をし,当初の所有者から開発業者に所有権移転登記手続をしたのち,開発業者が地方公共団体に所有権移転承諾書を提出し,地方公共団体は,それを添付して,嘱託登記申請し,所有権移転登記をすることとなる。
これは,開発行為の完了公告がなされた時点で,実体的には地方公共団体が当該土地所有権を都市計画法に基づき,原始取得することになるが,手続上,原始取得を原因として直接所有権移転登記をする方法がないためである。
本件でも,控訴人は,D株式会社に対し,本件各土地を含むD株式会社名義になっていた土地について,帰属すなわち所有権移転承諾書の提出を要請していたのであり,本件各土地がすでにD株式会社に帰属するものではなく,控訴人に帰属するものであることは,控訴人の担当者とD株式会社の代表者であるEの共通の認識となっていた。
控訴人の担当者は,D株式会社以外の第三者に対しては本件各土地の所有権を主張できないと誤解していただけであり,D株式会社との関係では,当然,控訴人の所有権が存するとの認識だった。
(3) 本件で,被控訴人A及び被控訴人Bは,控訴人がすでに本件各土地の所有権を法的に取得しているにもかかわらず,何らかの事情で登記が経由されていないとの認識であった。
すなわち,ある土地が開発区域内にあり,その地目が公園であるとの認識があれば,一般人は,その土地が公共施設用地であり,地方公共団体すなわち控訴人に帰属すべき土地であると考えるのが通常である。
本件で,被控訴人Aは,平成11年3月ころ,現地を見分しており,本件各土地が開発区域内にあることを認識し,その地目が公園であることも認識しつつ売買契約を締結しているのであるから,同被控訴人は,すでに控訴人が本件各土地の所有権を法的に取得しているとの認識を有していたというべきである。
また,被控訴人Bも,建設業を営む会社の代表取締役であり,目録2記載の土地が開発区域内にあること及びその地目が公園であることを認識していたものと推認できる。
そして,被控訴人らは,本件各土地の所在,形状及び地目等を知悉し,本件各土地について経済的価値がないことを知りつつ,被控訴人Aは,右翼団体構成員であるFを,被控訴人Bは,日本同和同盟書記局長を名乗るHを,それぞれ交渉を有利に運ぶために利用し,控訴人から利得を得ようとし,さらに,本訴に先立つ調停や,原審での和解の席においても,高額の和解金を請求していた。
そうすると,被控訴人らは,いわゆる背信的悪意者として,本件各土地についての控訴人の登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者に当たらない。
(4) 本件各土地の取引に実質的な対価関係はないから,被控訴人らは,通常の不動産取引における利益を享受すべき立場にあるとはいえない。
すなわち,Eと被控訴人A,同株式会社Cとの間の貸借関係は,会社と個人の区別が特定できない不自然なものであるし,D株式会社と被控訴人株式会社Cとの準消費貸借(乙1)の旧債務や,他の貸借関係についても,これを裏付ける証拠はない。
仮に,これらの貸借関係があるとしても,本件各土地の被控訴人Aへの所有権移転登記は,D株式会社が不渡りを出したあとにされたもので,その移転行為自体,否認権の対象となりうる。
さらに,被控訴人Bは,その経営する会社の営業上,請負代金の回収は極めて重要な問題であるところ,換金性がほとんどない目録2記載の土地及び調整池を取得したことは,経済的合理性がなく,極めて不自然である。
(被控訴人らの当審における主張)
(1) 控訴人がD株式会社宛に発した「都市計画法第四十条に基づく公共施設の用に供する土地の帰属請求通告書」にいう「帰属」とは,所有権の移転と所有権移転登記手続を含めた意味で使用しているものと解される。
同文書の発信者としては,登記手続がなされることによって,所有権が確定的に移転するとの認識であったと考えられる。
そうすると,それを被控訴人Aが読んでいたとしても,この文書の表現から,本件各土地の所有権がすでに控訴人に帰属していると認識することは不可能であった。
被控訴人Aは,法の内容については,全く知識がないし,一般の社会において,法律上の原因に基づいて当然に,かつ,無償で,第三者に不動産の所有権が移転するというのは極めて稀なことである。
また,控訴人の担当者は,上記文書の発信の前後にわたって,本件各土地の所有権がD株式会社からの寄付というような贈与契約によってのみ移転しうるものと認識していたものであり,それを前提に,被控訴人Aにも,公園等の所有権移転には口を挟むつもりはないなどと発言していた。
このような状況で,被控訴人Aが,本件各土地がすでに控訴人に帰属しているという認識を持つことはなかったし,同被控訴人が,上記文書について,弁護士等に相談をして,本件各土地がすでに控訴人に帰属しているとか否かを確認する必要性を感じることもなかった。
(2) 被控訴人Aは,公園については,これを将来的に宅地化できるものと認識していたものであり,近い時点で換価可能性があるものと考えていた。
なお,実務上,田,畑等の農地から宅地への地目変更に関しては,これを規制する通達等が出されているが,それ以外の地目の変更に関する規制は存在しないから,法律上,公園という地目を宅地に変更することは可能である。
D株式会社が,法40条2項に基づき,本件各土地をそのまま公園として管理すれば,経済的にマイナスの評価をすべきかもしれないが,被控訴人らは,その義務を承継するとの認識は持っていなかった。被控訴人Aは,その有する債権の実質的回収のために本件土地を取得したものである。

第3 当裁判所の判断

1 当裁判所は,控訴人の被控訴人らに対する請求は,いずれも理由があるものと判断する。
その理由は,次のとおりである。
(1) 本件の事実関係
原判決事実及び理由欄第2の2の前提事実(2頁以下)及び証拠(甲1ないし4,6ないし10,14ないし17,23ないし26,乙1ないし8,10,12ないし14,16,17,22ないし24,原審証人E,原審での被控訴人A本人。書証については枝番を含む。)に弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。
ア D株式会社は,平成5年8月9日,I市a町b丁目,同市c町d丁目,同市e町f丁目所在の土地(総面積48040.55u)の宅地造成事業を行うため,J県知事(I土木事務所長)に対し,法29条に基づく開発許可を申請し,同年9月8日,その許可を得た。
上記開発行為に係る工事は,平成6年4月5日完成し,D株式会社は,法36条1項により,その旨をI土木事務所長に届け出て,同月26日,同条3項により,その旨がJ県報に公告された。
イ 法40条1項は,開発許可を受けた開発行為又は開発行為に関する工事により,従前の公共施設に代えて新たな公共施設が設置されることとなる場合においては,従前の公共施設の用に供していた土地で国又は地方公共団体が所有するものは,法36条3項の公告の日の翌日に当該開発許可を受けた者に帰属するものとし,これに代わるものとして設置された新たな公共施設の用に供する土地は,その日にそれぞれ国又は当該地方公共団体に帰属すると規定している。また,法40条2項は,開発許可を受けた開発行為又は開発行為に関する工事により設置された公共施設の用に供する土地は,前項に規定するもの及び開発許可を受けた者が自ら管理するものを除き,法36条3項の公告の日の翌日に前条の規定により当該公共施設を管理すべき者に帰属すると規定している。
上記の公共施設とは,道路,公園のほか,その他政令で定める公共の用に供する施設,すなわち,下水道,緑地,広場,河川,運河,水路及び消防の用に供する貯水施設等を指す(法4条14項,法施行令1条の2)。
ウ 本件各土地は,上記開発区域内に存在する公園であって,公共施設の用に供する土地に該当し,その管理者をD株式会社とする特段の合意もなかったことから,本件各土地の所有権は,開発行為完了の公告の日の翌日である平成6年4月27日,公園用地である本件各土地を管理すべき控訴人に帰属した。
ちなみに,法40条2項は,公共施設の管理権の帰属者とその施設用地の帰属者とを一致させることにより,公共施設をめぐる権利関係の簡明化を図る趣旨から設けられたものであり,同項による所有権の帰属は法律上当然に生じ,管理者の所有権取得は原始取得の性質を有するものである。
エ D株式会社は,目録1記載の1の土地については平成7年6月5日,地目を公園として表示の登記をした上で,同月14日,自己名義で所有権保存登記をした。
また,目録1記載の2及び3の各土地については,所有権移転又は合併による所有権登記を経た上,平成6年7月25日,地目を田から公園に変更をし,目録2記載の土地については,合併による所有権登記後,同年6月28日,田から公園に地目変更登記をした。
この間,D株式会社は,平成7年4月25日,本件各土地を含む開発区域内の土地について控訴人に対する所有権移転登記手続の申請をした。
しかし,その一部の土地について,農地転用届出の日付が開発行為の完了公告の日のあととなっており,移転登記ができないとのことであったため,結局,全部の土地について,その申請を取り下げた。
そのため,本件各土地を含む公共施設の用に供する土地については,控訴人に所有権移転登記はなされないままであり,控訴人は,本件各土地を公共用財産として台帳に記載せず,また,公園としての整備工事も行わなかった。
オ その後,D株式会社の資金繰りが悪化したことなどから,Eは,平成10年5月6日,I市役所を訪れ,本件の開発区域内に生じた調整池を控訴人が有償で引き取ってほしいなどとの要請をした。
その際,控訴人の担当者は,D株式会社で開発した区域内に,公共施設の用に供する土地として,控訴人に帰属している土地が多数あるにもかかわらず,それが登記されないままになっているとして,D株式会社の当時の代表者であったK(Eの父)に早急な対応を要求し,Kも検討する旨答えた。
カ 平成11年8月中旬,控訴人は,本件の開発区域内の公共施設の用に供する土地につき,第三者に所有権移転登記されそうだとの情報を得て,D株式会社に控訴人への移転登記の進捗状況を問い合わせた。
すると,同月18日,被控訴人A及びその委任を受けた右翼団体の構成員であるFがI市役所を訪れ,Fが,開発行為が終わってから5年も経って話に割り込むななどと話した。
これに対し,控訴人の担当者は,調整池や公園の権利を侵害するつもりはない,道路の移転登記の進捗状況を聞きたかったなどと述べた。
なお,当時,控訴人の担当者は県などへの問い合わせの結果,このような場合,第三者に登記がされた場合には,登記を得た者の権利が優先するとの回答を得ていた。
そのこともあって,当時,控訴人の担当者は,本件各土地の所有権移転登記手続としては,D株式会社からの寄付による方法しかないとか,第三者に登記が移転された場合,控訴人が有償で買い戻さない限り,その所有権を取得することはできないといった必ずしも正確とはいい難い認識を持っていた。
キ このような中で,被控訴人Aの経営する被控訴人株式会社Cは,平成11年8月18日売買予約を原因として,同月19日,本件各土地につき所有権移転請求権仮登記をした。
当時,D株式会社は,上記被控訴人らに対し,立替金債務や貸金債務を負担していた。同被控訴人らの主張するD株式会社に対する債権の内訳は,原判決別紙一覧表番号1ないし12記載のとおりであり,同年11月の時点では,1686万2906円となる。
D株式会社は,それ以前から資金繰りが逼迫しており,同被控訴人らに対する債務を返済できない状況であった。
ク 控訴人は,平成11年8月25日付で,D株式会社に対し,「都市計画法四十条に基づく公共施設の用に供する土地の帰属請求通告書」と題する内容証明郵便(甲17の1,2)を送付した。その内容は,本件の開発行為にかかる公共施設の用に供する土地については,控訴人が再三口頭により催促をしてきたが,未だ法40条に基づく帰属がなされていないので,早急に控訴人に帰属させるよう通告するというものであり,登記費用については話し合いに応じる旨が付記されている。
ケ 平成11年8月30日,再び,I市役所で,被控訴人A,F,Eと控訴人の担当者との間で話し合いがなされた。
Fは,上記の内容証明はD株式会社の旧代表者宛になっているから,無効であるなどと述べたのち,公共施設の用に供する土地についても,いつでも所有権移転ができるなどと述べ,D株式会社が控訴人に帰属させなければならないのはどの部分かと尋ねた。
これに対し,担当者の1人は道路と公園であると答えたが,もう1人の担当者は,公園については口を挟むつもりはないが,道路については帰属させてほしいなどと話した。
同年9月9日にも,被控訴人A,F,Eと控訴人の担当者との間で話し合いが持たれ,その際,Eは自宅とD株式会社の事務所の土地を第三者に売却するに際し,控訴人が仲介してくれれば,借金は返済できるなどと言い,また,Fは何をするか分からない,被控訴人Aでは止められないとも述べた。
コ 被控訴人Aは,平成11年12月1日,D株式会社との間で,本件各土地と開発区域内の調整池を代金合計2000万円で購入するとの売買契約を締結し(乙4),同月6日,これらの土地についてD株式会社から被控訴人Aに対する所有権移転登記手続がなされた。その登記手続の委任を受けた司法書士は,同月1日,控訴人の担当者に対し,本件各土地は,公園用地であるが,所有権移転登記手続をしてもよいのか否かを照会した。
これに対し,控訴人の担当者は,好ましいことではないが,やむを得ないとの返答をした。
サ 被控訴人Aは,平成12年1月27日,本件各土地のうちの目録2記載の土地と調整池の1つを被控訴人Bに売り渡す旨の契約をし,同年2月4日受付でその旨の所有権移転登記手続をした。この売買契約は,上記各土地の宅地化の成否が不明であったことから,とりあえず,被控訴人Bが1500万円を支払い(実際は,被控訴人Bが経営する建設会社が,被控訴人Aが経営する会社から請け負った工事代金の一部を受領したことにする形で売買代金の処理がなされた。),宅地化が成功しない場合には,被控訴人Aが1200万円を返還し,宅地となった場合には64坪分を被控訴人Bが被控訴人Aに返還することを内容とする契約であり,契約書(乙6)上の代金額は300万円とされた。上記の所有権移転登記に伴い,目録2記載の土地についての被控訴人株式会社Cの所有権移転請求権仮登記は抹消された。
シ 本件各土地は,地目は公園であるが,遊具等が設置されているわけではない。
その面積は,一団の土地となっている目録1記載1ないし3の土地の面積が合計769u,また,目録2記載の土地の面積が356uであり,いずれも通常の宅地よりはかなり広く,外形的にも公園の用地であることは知り得る状況であった。
ス 本訴に先立つ調停において,被控訴人Aは,目録1記載の各土地を調整池と併せて2500万円で控訴人が買い取るように,また,被控訴人Bは目録2記載の土地を調整池と併せて1500万円で控訴人が買い取るように,要求していた。
なお,被控訴人Bは,上記の公園・調整池の地目変更に関する業務を同和同盟地域改善対策事業連合会総本部副会長・書記長Hなるものに委任するとして,その旨の委任状を控訴人に提出していた。
セ 上記のように,本件各土地が被控訴人らに所有権移転登記手続がされたのち,控訴人は,被控訴人Aに対しては平成12年度から平成14年度まで,被控訴人Bに対しては平成13年度及び平成14年度について,本件各土地に関して固定資産税を賦課してきた。
しかし,平成14年7月23日付をもって,「固定資産税,都市計画税の更正及び還付について」と題する書面で,これらの課税処分を取り消す旨の通知をした
(2) 本件各土地をめぐる権利関係について
ア 上記(1)認定事実からすれば,控訴人は,法40条2項の規定により,法36条3項の公告の日の翌日である平成6年4月27日,本件各土地の所有権を原始取得したものと認められる。
しかし,他方,その原始取得の後に,被控訴人株式会社Cは,本件各土地について売買予約を原因とする所有権移転請求権仮登記を取得し,また,被控訴人AはD株式会社から本件各土地を譲り受けたとして,その旨の所有権移転登記を取得し,そのうち目録2記載の土地については,被控訴人Bに譲り渡したとして,その旨の所有権移転登記手続をしたことが認められる。
イ 後記のように本件各土地が実質的にみて利用価値の乏しい土地であることに照らせば,上記被控訴人らの各登記に対応する実体的な取引行為があったか否かについては疑問を入れる余地があるけれども,その点は,ひとまずおいて考えると,このような場合,控訴人の所有権の取得は原始取得であるとはいえ,実質的にはD株式会社からの物権変動があったものと同視できるから,上記の所有権移転の関係は,いわゆる二重譲渡類似のものとして,民法177条によりその所有権の帰属を決するのが相当である。
そして,民法177条にいう第三者とは,当事者もしくはその包括承継人以外の者であり,物権変動に係る登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する者をいい,背信的悪意者はこれに該当しない。
そこで,以下,被控訴人らが背信的悪意者に該当するか否かを検討する。
(3) 被控訴人らの背信的悪意者該当性
ア 被控訴人らが上記の背信的悪意者に当たるか否かを検討するに当たっては,被控訴人らが,本件各土地の所有権がすでに控訴人に帰属していたことについての認識があったか否か,また,それについての権利取得の意図や動機等が問題となると考えられる。
イ まず,本件各土地の所有権の帰属状況についての被控訴人らの認識について検討する。
(ア) 控訴人がD株式会社に対し,遅くとも平成10年5月当時,本件各土地が控訴人の所有であることを前提に,その帰属すなわち所有権移転の手続をするよう要請していたことは上記のとおりである。
D株式会社の代表者であるEと被控訴人Aとは比較的親密な関係であったと認められる(乙17,24)。
そして,被控訴人Aは,D株式会社の債権者であったものであるし,当時,D株式会社の経営は悪化していたのであるから,被控訴人Aは,D株式会社の所有名義である本件各土地の換価価値すなわちその利用可能性に強い関心を抱いていたと考えられる。
そうすると,被控訴人Aは,本件各土地が通常の形では利用できない土地であることを知っていたものと推認されるし,その原因となった上記のような事情についてもEから聞いていた可能性が高い。
(イ) さらに,被控訴人Aは,平成11年8月18日には,本件各土地を含む開発区域内の公共施設の用に供する土地の件で,右翼団体の構成員であるFを伴ってI市役所を訪れ,その席でFは,控訴人の担当者に対し,D株式会社と被控訴人との話に割り込むななどと言って,控訴人の本件各土地についての権利主張を牽制するような話をしている。
そうすると,遅くともこの時点においては,被控訴人Aは,本件各土地について控訴人が所有権を主張していること,あるいは,少なくともそれを主張する可能性が高いことを知っていたと考えられる。
なお,同日の話合いの際,控訴人の担当者の1人が,調整池や公園の権利を侵害するつもりはないなどと述べ,その後,同月30日の話合いの際も,控訴人の担当者の1人は,公園については口を挟むつもりはないなどと発言していることは,上記(1)認定のとおりである。
しかし,本件の一連の経過からすれば,これはD株式会社がこれらの土地を第三者に譲渡した場合に,その権利関係を尊重するという趣旨の話と解するのが相当であり,D株式会社に対する関係では,控訴人が本件各土地等についての所有権を有することがその発言の前提となっていたものと解される。
そして,上記の一連の経過からすれば,そのことは,Fや被控訴人Aにおいても認識し得たと考えられる。
(ウ) その後,控訴人は,同年8月25日付の内容証明郵便で,D株式会社に対し,本件各土地を含む公共施設の用に供する土地について,控訴人に権利を帰属させるよう通告する内容証明郵便を送付していること,その内容証明郵便送付の事実をFは了知していたこと,Fは,本件各土地をめぐる交渉について被控訴人Aから委任を受けており,その代理人的な立場にあったことは上記(1)認定のとおりである。
そうすると,この時点において,被控訴人Aは,本件各土地について控訴人が所有権を主張していることを確定的に知ったものと認められる。
被控訴人らは,上記内容証明郵便にいう「帰属」とは,所有権の移転と所有権移転登記手続を含めた意味で使用しているものと解され,同文書の発信者としては登記手続がなされることによって,所有権が確定的に移転するとの認識であったと考えられるから,それを被控訴人Aが読んでいたとしても,この文書の表現から,本件各土地の所有権がすでに控訴人に帰属していると認識することは不可能であったと主張する。
しかし,同内容証明郵便では,「法四十条に基づく帰属」という表現が用いられているのであり,寄付等の手続によらずに,法に基づく直接の効果として,所有権移転の効力が生じるものであることは,一般人においてもある程度推知できたと考えられる。
また,仮に,同文書にいう「帰属」が所有権移転登記手続を含めた意味で使用されているとしても,登記手続を求めるということは,その前提として,所有権の移転を伴う実体的な権利関係の変動が生じていることは,通常人においても知り得たと考えられる。
上記被控訴人らの主張は採用し難い。
ウ 上記イのような一連の状況の中で,被控訴人Aの経営する被控訴人株式会社Cは,平成11年8月18日売買予約を原因として,同月19日,本件各土地につき所有権移転請求権仮登記をし,また,被控訴人Aは,同年12月1日,本件各土地及び開発区域内の調整池を代金2000万円で買い受けるとの契約をしたものである。
そうすると,上記被控訴人らは,本件各土地について,控訴人がD株式会社に対し,控訴人が所有権を有することを前提に,その権利帰属の要請をしていることを認識しつつ,あえて本件各土地について,所有権移転請求権仮登記及び所有権移転登記を経由したものと認めるのが相当である。
エ そこで,被控訴人らのこのような権利取得の意図,動機について検討する。
(ア) 本件各土地は,法に基づく開発区域内にある公園である。その面積も,通常の宅地よりは広く,外形的にみても公園の用地であることを知り得る状況であった。
このような開発区域内にある公園については,一般人は,それが公共施設用地であり,開発行為完了後は,地方公共団体に帰属すべき土地であるとの認識を持つのが通常である。
それが宅地として利用可能な土地であると信じるとは通常考えにくい。
もっとも,本件各土地については,開発行為の完了後,被控訴人らに所有権移転登記がされるまで5年以上も控訴人に登記が移転されないままであり,かつ,公園としての利用や管理もなされていなかった。しかし,その間も地目は公園のままであったし,本件各土地の一部についても宅地としての利用に向けての造成や工事がなされていたわけではない。
そうすると,このような本件各土地について,被控訴人らが宅地等として利用可能な土地であるとの認識を持っていたとは考えにくい。
そうすると,被控訴人らが,本件各土地がみずからが宅地等として利用する目的で,それについての権利を取得したとは考えられない。
被控訴人Aは,公園については,これを将来的に宅地化できるものと認識していたものであり,近い時点で換価可能性があるものと考えていたと主張するけれども,上述のところに照らし,採用し難い。
(イ) 上記(1)認定事実からすれば,被控訴人Aは,本件各土地等をめぐる交渉に右翼団体の構成員であるFを関与させており,それによって,控訴人に何らかの圧力をかけようとしていた様子が窺われる。なお,被控訴人Aは,上記所有権移転請求権仮登記がなされたのちの平成11年9月9日,同被控訴人は,Eらとともに控訴人の担当者と面談し,その際,Eは,自宅不動産等の売却の仲介を控訴人に要請するとともに,Fは何をするか分からない,被控訴人Aでは止められないなどと,控訴人の担当者を威迫するような言動をしている。
前述のようなEと被控訴人Aの関係や,被控訴人AとFの関係からみて,このようなEの発言は,被控訴人Aの意向を反映したものである可能性が高い。
さらに,被控訴人Aは,本件各土地を買い受けたのち,本訴に先立つ調停において,目録1記載の土地を調整池と合わせ,2500万円で買い取るよう要請しているが,これは,本件各土地が公園という宅地として利用できない土地であることを考えれば,かなりの高値ということができる。
(ウ) 上記(ア),(イ)の事情を総合して考えれば,被控訴人A及び同被控訴人が代表取締役である被控訴人株式会社Cは,本件各土地についての所有権移転請求権仮登記あるいは所有権移転登記を経由することによって,本件各土地をめぐる控訴人との交渉により,何らかの不当な利益を得ようとして本件各土地について所有権移転登記を経由したものと推認することができる。
なお,被控訴人Aが,上記所有権移転登記に際し,控訴人に対し,司法書士を介して登記をしてもよいか否かを照会し,これに対して,控訴人の担当者が,好ましいことではないが,やむを得ないとの返答をしたことは上記(1)認定のとおりである。
しかし,上記のような本件の一連の経過からすれば,被控訴人らは,その回答を得る以前から,本件各土地をめぐる交渉において,何らかの利益を得ようと考えていたものと認められるのであるから,そのように照会したことをもって,上記被控訴人らに不正な意図がなかったということはできない。
オ 被控訴人Bは,平成12年1月27日,目録2記載の土地と調整池を被控訴人Aから買い受け,同年2月4日付でその旨の所有権移転登記をしたものである。
被控訴人Bは建設業を営む会社の代表取締役であり,目録2記載の土地のような開発区域内にある公園については,それが公共施設用地であり,開発行為完了後は,地方公共団体に帰属する土地であるとの認識を持っていたと考えられる。
宅地転用の可能性を残す調整池(雑種地)518uを含む874uという土地について,300万円という低価格での売買契約が締結されたのも,このような事情によるものと推測される。
このように実質的な利用可能性が乏しい土地を被控訴人Bが買い受けるに至った意図,目的について検討するに,同被控訴人は,その後,本訴に先立つ調停において,上記の各土地を1500万円で買い取るように控訴人に要求していたこと,これはその実質的な買受け価格からみて,かなりの高値であること,また,被控訴人Bは,これらの土地の地目変更に関する業務を同和同盟地域改善対策事業連合会総本部副会長・書記長Hなるものに委任する旨の委任状を控訴人に提出するなど,一連の交渉において,控訴人側に何らかの圧力をかけようとしていた様子が窺われることなどからすれば,同被控訴人は,上記各土地をめぐる控訴人との交渉によって相当の利益を得ることを目的として,上記各土地を取得したものと認めるのが相当である。
そうすると,被控訴人Bについても,目録2記載の土地の所有権がすでに控訴人に移転しているにもかかわらず,その登記名義がD株式会社のままであることを利用して,被控訴人Aが所有権移転登記を取得したという事情を知りながら,控訴人との交渉により不当な利益を得ようとして本件各土地について所有権移転登記を経由したものと認めるのが相当である。
カ このようにみてくると,被控訴人A,同株式会社C,同Bは,いずれも背信的悪意者として,本件各土地についての控訴人の登記の欠訣を主張する正当な利益を有する第三者に当たらないというべきである。
(4) 信義則違反等の主張について
ア 被控訴人らは,本件各土地について長期間自らの権利行使を懈怠し,被控訴人らの所有権を承認する言動を行ってきた上,課税対象にしてきた控訴人が,一転して態度を変えて自らの所有権を主張することは,信義則に反し,あるいは,権利の濫用であって許されないと主張する。
イ たしかに,控訴人は,本件各土地について控訴人への所有権移転登記手続が未了のままであったため,公園としての管理等を行っていなかったものである。
しかし,それは,本来すみやかになされるべき控訴人への所有権移転登記が,D株式会社の登記申請上の問題から遅延したままになり,その後,控訴人がD株式会社に対し,権利帰属の要請をしても,それが履行されなかったという事情によるものであって,この間,控訴人が権利行使を全く怠っていたというわけではない。
また,平成11年当時,控訴人の担当者は,本件各土地の所有権移転登記手続としては,D株式会社からの寄付による方法しかないとか,第三者に登記が移転された場合,控訴人が有償で買い戻さない限り,その所有権を取得することはできないといった必ずしも正確とはいい難い認識を持っていたこと,そのため,本件各土地について被控訴人らに所有権移転登記がされてもやむを得ないなどの発言をし,さらに,その登記後は,一時期,それに固定資産税等を賦課していたことは上記(1)認定のとおりである。しかし,このような必ずしも正確とはいい難い認識に基づく対応によって,被控訴人らが本件各土地について権利を有するように誤信した事実は認められないし,仮に何らかの期待を抱いたとしても,その期待は上記のような不当な利益を得られることに対する期待であるというほかないから,その期待についてこれを法的な保護に値するものということはできない。
なお,租税の賦課については,その後,その賦課処分は取り消され,必要な還付手続もとられていることは上記(1)認定のとおりである。
ウ このようにみてくると,被控訴人ら主張のような事情をもって,控訴人の本訴請求が信義則に反するとか,権利の濫用であって許されないなどとはいえない。
2 結論
したがって,控訴人の本訴請求は理由がある。これを棄却した原判決は失当であるから取り消しを免れない。そこでこれを取り消し,控訴人の請求を認容することとする。
よって,主文のとおり判決する。

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